伝統的河川工法「聖牛」詳細

聖牛は実施された河川によって多少構造材の大きさを異にするが、三角錐をなし、三対の合掌木を備え、棟木の長さにより「大聖牛」、「中聖牛」などの名がある。

 「地方凡例録」によれば、これは武田信玄の創案になるものと云われ、従時は専ら山梨県の釜無川、笛吹川に施工されたが、次で信玄の勢力圏拡大に伴って天竜川、大井川、安倍川、富士川に伝わり、享保年間以後は各地に流布するに至った。

 聖牛は牛粋の改良されたもので、その構造は簡単であり、堅牢な三角錐型を採るため、前面の洗掘を受けて前に傾斜してもよくその形を保ち、目的を達している。

 一般に急流河川の砂礫の激しい所の水制、締切工事などに適している工法である。

1)構造

 川倉をさらに補強したもので、基本的構造は以下のとおり。

  1. 一対の前合掌木と砂払いで三角形をつくる。
  2. 棟木をこれに連結し立ち上げ基本の三角錐をつくる。
  3. 前立木を前合掌木と砂払いに連結する。
  4. 桁木を河心側が下になるように棟木に連結し、その上に前梁木を連結する。
  5. 梁木の位置を確認し、後・中合掌木を連結した後、後・中梁木を連結する。
  6. 敷成木を梁木に連結し、その上に蛇籠を重し籠として載せるとともに、後部に尻籠を置く。

 聖牛の種類は以下の通り。

  (中聖牛)
    三対の合掌木を備え、一般に棟木の長さ7.3m、末口12cmのもの。
  (大聖牛)
    三対の合掌木を備え、一般に棟木の長さ9.0m、末口15~18cmのもの。
  (大大聖牛)
    四対の合掌木を備え、一般に棟木の長さ12.7m、末口20cmのもので、二段の棚を設けて重籠を積載するもの。

2)用途

  急流河川において土木が流送される場所の水制、根固、破提箇所の締切りなど。

島田市川根町家山周辺での設置の様子

一級河川大井川 島田市川根町家山聖牛の種類:大聖牛
大井川河口より34km付近
1群 前列に3基 後列に2基
大井川左岸に平成8年3月に設置
平成8年4月15日
平成9年7月13日
(梅雨前線豪雨後)

平成10年9月16日
(台風5号上陸後)
平成10年9月24日
(梅雨前線豪雨後)
平成11年3月1日

川根本町高郷周辺での設置の様子

一級河川大井川
川根本町高郷
聖牛の種類:大聖牛
大井川河口より52km付近
1群
前列に3基
後列に2基
大井川右岸に平成7年2月に設置
流木による崩壊状況
平成10年9月16日
(台風5号上陸後)

 平成10年9月24日
(梅雨前線豪雨後)

平成11年3月1日